文化祭にて 43
「ということで先輩。あたしお腹空いたんで行きましょう」
早速とばかりに立ち上がった涼音が言う。
「そうね。外の模擬店には食べ物がいっぱいよ!」
涼香も立ち上がり、行く気しかないことを伝える。
「文化祭テンション、恐ろしいわね」
そんな二人を見上げた紗里がぽつりと呟いた。
「行ってらっしゃい」
「はい、ありがとうございました」
「ありがとう委員長」
涼香と涼音は階段へ向かう。途中ヌルッと壁から屋上に戻ってきた真奈とすれ違いながら。
その背中を見ていた紗里は、隣にいる翔にだけ聞こえる声で言う。
「私も、この文化祭テンションにあやかることにしようかな」
「……応援しますけど、もうちょい休ませてください……」
階段を降りながら、涼音は涼香と歩幅を合わせる。
「あたし、こうして先輩といるの好きですから。なんやかんやで楽しいですし」
「それは宇宙が始まる前から決まっていることよ。私もそう思っているわ」
「前半いらなくないですか?」
「涼音が可愛いのがいけないのよ」
「はあ?」
そんな会話をして三階に降りる。もうここからは多数の生徒や来校者がいる。目立つことは必然だ。ただそれでも、涼音はもうどうだっていい。涼香がいれば、涼香と一緒なら気にしない。だって涼香がいればそれでいいのだから。




