表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/928

放課後にて 3

「右と左どっち?」


 ある日の放課後、涼香(りょうか)は前に座る涼音(すずね)に左右の手を握って差し出していた。


「……」


 涼音はチラリと、スマホを見ていた目を涼香の手に向けるが、興味が無いらしく、すぐにスマホに目を戻した。


「右と左どっち?」


 それでも涼香はめげなかった。再び同じことを繰り返す。


「……急になんですか?」


「質問で返さないでくれるかしら」


 涼香は早く選んで欲しかった。早く選びなさい、と急かす。


「……右で」


 このままでは埒が明かないと判断した涼音は適当に答える。


 すると涼香は、パッと顔を輝かせ、すぐに曇らせる。


「どっちから見て右かしら……?」


「えぇ……」


 涼音は涼香の右手をぺちぺち叩く。涼音から見て左、涼香から見て右の手だ。


「そう、こっちを選んだのね」


 そう言った涼香が選ばれた右手を開く。するとそこにあったのはくちゃくちゃになった紙切れだった。


「ゴミを捨てろってことですか?」


 それならわざわざそうしなくても捨てに行ったのに。


「それはどうかしら。この紙を開いて――ちょっと涼音、捨てようとしないで」


 紙切れを持ってゴミ箱に向かった涼音を慌てて涼香が止める。ちょうど別れを切り出された彼女見たいな構図だった。


「紙を開いてみて」


 言われた通りに紙切れを開いた涼音。中に書かれていたのは――。


「『先輩との記念写真撮影券』……?」


 広げられた紙には涼香の手書きでそう書かれていた。


「そうよ、涼音にプレゼ――ちょっと捨てようとしないで!」


「じゃあ返品で」


「返品はできないわ!」


「なら売ってきますね」


 下級生に高値で売れるだろう。絶対しないが。


「やめなさい。泣いていいかしら?」


「どうぞ」


「冷たいわね」


「そんなことより、なんで急にプレゼントなんか用意したんですか?」


 『そんなこと』で片付けた涼音に、恐ろしいものを見たような表情を向ける涼香。


 その後三十分にもわたり、プレゼントを渡す理由の説明をされた涼音、帰る頃には頭がスッキリしていたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ