文化祭にて 27
まさかこの気持ちを知られているとは。
一番知ってほしい若菜には伝わらないのに、その友人達には伝わる。
周りには伝わるのに、一向に伝わらない若菜はなんて鈍感なのか。
「それでそれで! わかなんのどこが良かっんすか‼」
紗里の心の内など解らない翔は詰め寄って詰め寄る。
詰め寄られすぎて、リンボーダンスの世界でまあまあ勝負できるぐらい仰け反った紗里は、顔を隠しながらか細い声で答える。
「そっ、それは……言いたくないわ……」
「クゥワァイイイイ‼ 待って待って可愛すぎる……え、可愛すぎん? 失っていたなにかを取り戻した気分……あー、可愛い……」
今度は紗里以上に仰け反った翔が叫ぶ。
「えぇ……」
困惑しながらも、少し心が軽くなった気がする紗里である。
「よっしゃ! 先輩がわかなんに気持ちを伝えられるようにうち頑張りますから!」
「いえ、別にそこまではやらなくても――」
「遠慮せずに! やらせてください!」
「遠慮じゃないのだけれど……」
どれだけアピールをしても、なんなら家に呼んでたまに泊まらせたりしているが、紗里の気持ちに若菜が気づく気配は皆無、虚無で可能性というものの存在がバカバカしくなってしまう程だ。
ただ、紗里には確信があった。
(多分、若菜は他の人のところには行かないと思うのよね。だってお泊まりもしているし、勉強も見て、胃袋も掴めているはずだし。そう、これは半同棲状態と言っても過言では無いわ! それに――)
それに若菜は、紗里の秘密を知っても、寄り添ってくれた。そのせいで今この状況になってしまったのだが、家族と変な人を除けば、唯一紗里の秘密を知る者だ。
ズルい話だが、その秘密が楔となって、若菜は紗里の近くにい続けるはず。
(我ながら最低ね。でも、若菜は私に他の人ができるまで――って考えてそう。私は若菜がいいのに、若菜以外いらないのに……)
また一人気持ちが沈んでしまった紗里。しかしそれを外に出すことはしない。
「先輩、わかなんって多分モテると思うんすよ。明るいしノリが良いし可愛いところあるし」
「知っているし大丈夫よ、どうせ男なんて私を見れば私を好きになるのだし」
「えぇ……」
「あと私は強いわ。大腿骨を粉砕してあげるわ」
「ツッコミに困ること言わないでくださいよ」
沈んだ先に待っている自身の棘が言葉になって出てしまう。
「……………………………………冗談よ」
「いやガチでできそう」
「さて、行くわよ!」
「うわ涼香みたいな誤魔化しかた‼」




