文化祭にて 24
特別棟のある一室、引かれたカーテンの隙間から外を覗く者が一人。
そう――暇人である。
あれから千春は、スキップしながら移動し、面白そうだからと元生徒会長の力(堂々とする)で教室を一部屋占領した。
窓の外では、涼香が涼音を物理的に振り回している。
動きはフォークダンスというか、フィギュアスケートの方が近い。
「怪我するなよー……」
そして案の定、涼香は足をもつれさせて転ぶ。当然涼音も一緒に転び、二人揃って笑っている。
「ちーちゃんいた……」
「ほう、よくここにいると分かったな」
「堂々と入っていく姿見られてたから。それよりなにしてたの? こっちは血眼になって芹沢探してるのに」
「あ、そうそう。これ貰った」
教室に入ってくるや否や、ぶつくさ文句を言う千秋に千春は涼音から貰ったクッキーを見せる。
「え⁉ 嘘⁉ 見つけられたのちーちゃん⁉」
「まあ、私にかかればこんなもんよ」
縮地でも使っているのかという速度で千春までの距離を詰めた千秋、そしてここねのクッキーを矯めつ眇めつ。
「これが……あの……?」
未だ信じられないといった千秋に、千春は窓の外を指差す。
「貰った」
その言葉で、千秋はなにか納得したようで、窓の外を見る。
「なにしてんの……? あの二人」
「なにって――ほんとだ……」
外では、涼音が三角座りをしており、涼香がその前に立ってなにかを話していた。まるで演説のようなその風景に、千春と千秋はそっとカーテンを閉めるのだった。
「まあ……いつものことだし」
「そうね。クッキー、食べましょ」




