文化祭にて 23
千春に連れられた先は特別棟一階奥にあるトイレだ。しかし目的はその先、奥の窓だった。
「この先なら誰もいないぜ」
クイっと親指で指し示す千春。その先を窓を開けて確認した涼香と涼音は、おお~、と声を出す。
「まさかこんな場所があったとはね」
「立ち入り禁止区域っぽいですね」
「まあ、元生徒会長にかかれば余裕だぜ」
そこは校舎裏の更にその先。かなり大きな木が生えており、少し広場になっている。
「出る時は外から出ればいいと思うから、行ってらっしゃい」
千春に押され、涼香と涼音は窓から外に出ることにした。先に涼音が出て、千春と涼音の二人で安全を確保しながら涼香が外に出る。
「ありがとう」「ありがとうございます。あっ、これお礼のクッキーです」
千春に感謝を伝え、涼音はここねから買ったクッキーを渡す。
「え⁉ いいの⁉ やったぜ!」
千春は飛び跳ねながら、それじゃっ、と言って校舎に戻って行った。
これで、今この場には涼香と涼音の二人だけ。
改めてこの広場を見渡すと、こんな裏にあるのに結構綺麗に保たれている。日常的にどこかの部活か生徒が使っているのだろうか。
「涼音、涼音」
「なんですか?」
いつの間にか少し先に行っていた涼香に呼ばれ、涼音が追いつくと――いきなり腕を引かれた。
「ふぁあ」
そしてそのまま涼香に抱かれる涼音。
「ふふっ、可愛いわね!」
「急になんですか」
涼香の背に腕を回しながら涼音が言う。そしてこの場に人はいないだけで、校舎からは見られている可能性を思い出し、慌てて確認してみると、窓全てにカーテンが引かれていた。
ホッと一安心した涼音は、そのまま涼香に身体を任せることにした。




