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文化祭にて 20
手早く着替えた涼音は、しかしネクタイはそのままで教室から出ることにした。
どこで待ち合わせるかは決めていないが涼香のことだ、すぐに見つけてくれるだろう。
「涼音!」
「教室から出たばっかりですよ……」
「早く会いたかったのよ!」
「そですか、じゃあ早く行きますよ」
今この場でぴょんぴょん跳ねかねない涼香を連れ、とりあえず落ち着ける場所まで移動したい涼音。
涼香の母のおかげで、こうした他学年のいる中接しやすくなったが、そんなすぐに接し方を変えられるはずもない。
ひとまず三階へ――といつもの癖で行きそうになるが今は文化祭。校舎の隅々まで人がいる。
「えぇ……」
「どこへ行きたいの? お姉ちゃんに言ってみなさい」
「誰がお姉ちゃんですか。人が少ない場所ですかね、接客しすぎで疲れましたから」
「それならいい場所があるわ」
「ほんとですかぁ?」
本当にそんな場所があるのだろうかと、訝しむ涼音に涼香は自信満々に頷くのだった。




