文化祭にて 17
「あと三十分ね」
裏方で奮闘中の涼香は、解き放たれる時間が近づくにつれソワソワしていた。
もうすぐで涼音に会える。共に回ることができる。
「「ラストスパートだね」」
「ええ――と言っても、結構落ち着いてきてるわ」
涼香の母が帰るのと同時に、何割か人数は減っている。昼前ということと、涼香が外に出たと思われていることで人が減ったのだ。
それに、作戦が功を奏したのだろう。
「ふぅ、疲れたぁ」
「お疲れ様」
一時裏方にやってきたここねに、春と秋が涼香の代わりに紙コップに入れた飲み物を渡す。
「ありがとう」
「ここね、あなたはお昼からは家庭科部?」
水を飲み終えたここねはこくりと頷く。
「半分家庭科部で、売り切れたら菜々美ちゃんと回ろうかなって」
「「ここねって本当に活動してるの? 私達見つけたことないんだけど」」
「うん! 菜々美ちゃんと涼香ちゃんは毎年見つけてくれるよ」
「まだまだね」
家庭科部は、家庭科室での部員が作った小物類の販売に加え、それの移動販売もしている。そしてここねは、手製のお菓子を移動販売しているのだが、そのここねが見つからないで有名なのだ。
その小柄な体躯のせいか、それとも別の力が働いているのか、それを知る者はここねしかいない。
「じゃああとちょっと、頑張ってくるね」
「ええ」
「「頑張ってー」」
自分達もあと少しだと、それぞれ気合を入れる一人と二人である。




