表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

775/930

文化祭にて 13

紗里(さり)ちゃん、これ見て……! 紗里ちゃん?」

「――はっ、残りのぜんざいを食べるわ」

「いやもう食べたけど、それよりこれ見て」

「え、あ、そう? えっと、……これはどうなるの?」


 若菜(わかな)のスマホに表示されているのは、涼香(りょうか)を除いた三年生のチャットグループだ。そこに一人の生徒のメッセージがあった。


「涼香のお母さんが涼音(すずね)ちゃんのクラスで涼音ちゃんに抱きついたって」

「犯罪?」

「いや、なんか涼香になりすましてるらしいよ」

「犯罪ね」

「まあ……。でもなんか放っておいたら面倒事起こるからだって。その後の涼香の動きは私達任せだけど」


 若菜がやれやれと息を吐く。


「確かに、涼香ちゃんと涼音ちゃんの関係についての話がよく聞こえるわ」

「私には聞こえないなぁ」

「詳細は抱きついた本人に聞きましょうか」

「え?」

「若菜、走るわよ」

「ちょっと――」

「走るわよ!」

「いや――」

「行くわよ!」

「あ――」

「行くわ!」

「えぇ……」


 紗里に群がる集団を水が流れるように走り抜ける。その紗里が抜けた後、陣形が崩れた隙間を若菜がバスケ部仕込みのフットワークで抜け出す。


「どこ行くんだろ……⁉」


 まだ体力は衰えていない若菜は、視界から紗里が消えないように必死に追いかける。


 やがて人の数は少なく、紗里を囲っていた集団はいなくなる。そして廊下を曲がった先で紗里が待っていた。


「もう、早い……‼」

「ごめんなさい、でもよく頑張ったわね。人が多いと話しにくいでしょ?」

「それはそうだけど……」


 膝に手をついて荒い呼吸を繰り返す若菜に涼しい顔をして紗里が言う。


「涼香ちゃんのお母さんの視線を感じたのよ、間違いなく私を呼んでいるの」

「そんなことも分かるの?」

「分かるわよ。だって――」

「待っていたわ、宮木(みやぎ)の子」

「おおう、本当だ」

 紗里に言う通り現れた涼香の母を見て若菜が目を丸くする。

「お久しぶりです」

「久しぶりね、二人共。来てくれてありがとう」


 そう言いながら、涼香の母はミニ缶サイズのジュースを二人に渡す。


「――さて、説明とお願いを言いましょうか」


 二人が一息つくのを見て、涼香の母が口を開く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ