文化祭にて 7
「久しぶりですね」
「なんか、色々思い出すね」
「忘れもしませんよ、あの時、彩羽さんが手を引いてくれた時を」
「わたしも覚えてるけどさー。忘れたくても忘れられないし」
「忘れたいんですか?」
「いや全然! 忘れたくない!」
自分達の出会った日のことを思い出しながら、天理と彩羽はやって来た。
人の顔は当然違うが、あの時となにも変わらない文化祭。この様子も、後十年経てば変わるのだろうかと、どうしようもないことを考えながら歩く。
「最初にここちゃんと菜々美ちゃんに会いにいきましょか」
「りょーかい」
どのクラスがどこで、なにをしているのか、それが書かれてある掲示板があるが、それを見ずに天理が校舎内に足を踏み入れる。
その瞬間、黄色い歓声が聞こえる。
「こうなるとは思ってたけど……」
「困りましたね」
「なーんで笑ってるの?」
瞬く間に取り囲まれた天理と彩羽である。
「いえいえ、懐かしいなと思いまして。あの時、彩羽さんは看板で人混みを割って来てくれましたから」
「今は持ってませんよー」
「はい。でも、今はこうして隣にいるじゃないですか」
そう言って、自らの手を彩羽に差し出す。
「もうっ、仕方ないなー」
頭をかきながら、彩羽は天理の手を取る。あの時はただ手を掴んだだけだけど、今はもっと深く、指を絡ませる。
「はいはいはーい! 通りまあぁぁぁす!」
人混みを割りながら、ここねのいるクラスを目指す二人である。




