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文化祭にて 2
文化祭は一日だけだが、一日だけしかない故に生徒たちの集中力は研ぎ澄まされている。
大使館をする涼香のクラス、とりあえず裏方に回された涼香は、最初のシフトに組み込まれている。後の時間は自由に動けるようにだ。
涼音もなんとか午前中だけのシフトになったようだ。
一日で終わるため、シフトの入る時間が短いのが救いだった。
溢れかえる来場客を捌いて捌く涼香のクラス。
ちなみに裏方でちょろちょろする涼香を人目見ようとする下級生が多い。
「涼音に会いたいわ……涼音に会いたいわ……」
涼音のクラスは確か王子喫茶だ。涼音が王子になるのだ。これを見なければならない。見なければならない! 見なければならない‼ しかし現実は非情なもので、それは同級生達に阻止されてしまった。
裏方で涙を流す涼香の姿を見るものはクラスメイトだけ。
「さっさと動いてー」
道端に転がる石のような扱いを受ける涼香であった。




