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正気を保て‼ 3
「ゔぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
バシャバシャと顔面に水をかけながら。
「ごぼぉぼぼぼぼぼ……!」
半ば溺れながら、若菜は自らの犯した過ちを洗い流そうとしていた。
自分のやったことの記憶は残っている、それもガッツリと。
いくら正気ではなかったといっても、アレは無い。記憶が残っている時点で正気を保っていたとか保っていないとか関係ないのかもしれないがそんなことはどうでもいい。
そして水を止め、鏡に濡れた自分の顔を見て思い出す。
――ここは人の家だ。
かなりの回数紗里の部屋に来ていて、もう慣れているのだが、それにしても好き勝手やりすぎた気がする。
「もうダメだ……おしまいだぁ……」
ガックリと項垂れる若菜、その姿を見る者はどこにもいない。




