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百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


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彩られた天の下で

 月末のある日のこと。


 学校から帰り、着替えたここねは自転車で菜々美(ななみ)のアルバイト先へ向かっていた。


 それは住宅街にある個人経営の雑貨屋さんだった。


 こんな住宅街のど真ん中にある雑貨屋さんだが、こじんまりとした店とは裏腹に、人が溢れかえっている。


 ここの周辺住人全員が入っているのかという程の人数だ。


「今日も多いなあ……」


 近くに自転車を停めたここねは、人混みの中を縫っては縫って店内に入り込む。


 ざわざわと、きゃあきゃあと、毎度毎度変わらない光景のその先、声を向けられている方へと注目する。


 その人物はレジ対応中で、店内の照明の加減か、金色に見える髪を後ろでひとつに束ねている。


「ここね」

「菜々美ちゃん!」


 そんなここねの肩を後ろから軽く叩かれ、振り向きながらその叩いた主の名前を言ったここね。


「とりあえずこっち来て」


 そんな菜々美に連れて来られたのは店のバックヤードだ。


「こんにちは」


 ひょっこりとバックヤードに入ると、一畳半の中には菜々美とここねの他に、一人の女性がいた。


「こんにちはここねちゃん。ごめんねぇ、もう少しで閉店だから、それまで待っててもらえる?」

「はーい」

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