変わるものと変わらないもの 2
「段々涼しくなってきたけど、まだ外で食べるのは無理だねー」
「朝と夜は涼しいんですけどね」
昼休みになり、明里が彩を迎えに来て、夏美と合流して昼食を摂る。
場所は割と開放されている空き教室。どこの部活か彩は憶える気が無いため知らないが、無駄に多い部活の中には昼休みにも訳があったり無かったりで活動するものも多く、だからこんなにも空いているのだ。
「ねえ先輩、なんでこんなに教室空いているんですか?」
「知らない」
「それはねぇ、三年生の秘密だよー」
「えー、明里先輩なんですかそれ!」
三年生の秘密というのもふざけている訳ではない。基本的に問題児対応のためによく分からない部活が増え、こうして避難所を開けているのだ。
その避難所に全く関係の無い二年生の夏美を入れるのはどうかと彩は思わないでもないが、面白おかしく人に言いふらしたりしないだろうということでこうして招き入れている。
「まっ、他の人には言うなよ」
「分かりました!」
改めて注意をすると夏美は元気良く返事をして笑う。
その笑みを真正面から見ることができず、顔を背けた彩はお弁当のタコさんウインナーを摘まんで食べる。
先程からその繰り返しだ。
少し前までなら、夏美とご飯を共にしても見られなくなるようなことはあまり無かった。しかし、夏休み以降、変わらなかったものが変わってしまってからは、もう以前のようにはいられなく、夏美の一挙手一投足が気になるようになった。
変わってしまったことは他にもある。いつもなら、彩と夏美の二人っきりなのだ。しかし、夏休み以降、彩と夏美の他に明里が加わった。
そして、極めつけは――。
「彩ちゃん。はい、わたしのおかずあげる。手作りなんだぁ。はい、あーん」
「別にいらないから」
「だーめ。あーん」
明里の距離だ。
夏美は知らないはずだが、彩と明里は互いの感情を知っている。でも、今の夏美の反応を見る限り、明里の気持を夏美は知っているのかもしれない。
「先輩照れてるんですかー」
「は?」
「彩ちゃん照れてるんだぁ」
「別に照れてないから」
こんな風にからかわれることも無かった。
――どうせなら、夏美にしてほしかった。
今までなら、夏美が明里みたいなことをしていたはずだ。それが、今はそんなことをしない。なんでこうなったのだろうか。
思っている以上に変わってしまったことがあるのかもしれない。その全てを知ろうとは思わない。知らない方がいいこともあるだろうから。
でも、変わっていないことは探し出したい。そして、安心したい。




