東西南北 春夏秋冬
「今日集まってもらったのは他でもない……」
遮光カーテンが引かれた暗い教室内で、スマホのライトで自らを下から照らす生徒がいた。
机に肘をつき、手を組む。ちなみにスマホは肘と肘の間に置かれている。
「私はあなた程暇じゃないのよ」
「ボクも……」
「おいおいおい、私たち東西南が揃ってるんだぜ?」
「理由になってないわ」
「千春だけだよ? こんなに暇なのは」
東崎千春が呼び出した生徒は、西崎千秋に南崎千冬の二人だ。
二人の抗議の声を聞いて、千春は気味の悪い、暇だからこそできる笑い声をあげる。
「自分達の置かれた状況が解っていないみたいだな」
「解っているわよ」「解ってるよ」
既に着席していた千秋と千冬が答える。
「あ、そう。なら良かった」
さっさと用事を済ました方が早く帰ることができる。二人の共通見解だった。
「で、なに?」「なんでボク達が集められたの? さっさと話してよ」
「口悪いな……」
そしてすぐに頭を振り、とりあえず教室の電灯をつけて話し出す。
「北か夏が揃いましたー」
わーぱちぱち――と一人適当に盛り上がる千春であった。




