休み時間にて 15
「なに話してたの?」
「あっ、彩ちゃんー」
菜々美は躊躇っていたが彩は躊躇わない。
聞かれた明里はうふふと笑い答える。
「彩ちゃんのことだよぉ」
そして明里の視線は、彩の背後にいる菜々美とここね、おまけの涼香に向けられる。
「話すことなんて無いだろ」
呆れたように言う彩に首を振る。
「あるよぉ、彩ちゃんを振り向かせるにはどうしたらいいのかなぁって」
「はっ⁉ いや待て、は⁉」
「大丈夫だよぉ、ここねちゃんは秘密にしてくれるって言ってたし」
「いやいやいや、そんなの分かんないだろ‼ マジかよ……最悪……」
明里がどこまで話したのか。彩が誰を想っているというのはさすがに黙っているだろう。
でも、明里が想いを向けている人物が自分だと知られると、これからはなにを言われたり、されたりするのか分からない。
「彩ちゃん、大丈夫。ほらぁ見て」
軽く項垂れる彩の肩を叩き、後ろを向かせる。
そこでは菜々美とここね、おまけの涼香がなにやら話し込んでいた。見るからに明里との会話内容を聞き出そうとしているのだろう。
「えぇ……? なんか聞こえないけど解る気がする……嫌だなぁ」
そう呟きながらも彩はあの三人の観測を始める。
『なにを話したのよ。答えた方がいいわよ?』
『やめなさい涼香。ここねが答えたくないと言っているのよ!』
『菜々美ちゃん。わたし答えたくないなんて言ってないよ?』
『ここね⁉』
『ここねもそう言っているではないの!』
『えっ、でも……』
『別に世間話だから隠す必要ないよ。明里ちゃんと話していたのはね、文化祭のことなんだぁ』
『あら、そのこと。でもそれなら、菜々美を仲間外れにする必要はないではないの』
『やめてよ涼香、なんでそんなに無駄に鋭いの? 学力残量残りすぎよ』
『うーん……これは秘密なんだけどね――ってことなの。言っちゃった、せっかく菜々美ちゃんを驚かせようと思ったのに……』
『ここね……ごめんさい。せっかくここねがサプライズしてくれようとしていたのに、無理に問いただしてしまって……』
『ううん。わたしも菜々美ちゃんに隠すのは辛かったから。それに、もうちょっと時間と場所を考えた方がよかったなあって』
『悪いことをしたわね。ごめんなさい』
『そうよ! 原因は涼香よ‼』
『ううん、いいんだよ』
ここねが微笑んだところで彩は明里に向き直る。
「秘密の話は解らなかったけど大丈夫っぽい……」
「でしょぉ?」
会話内容は明里のことではなく文化祭の話になっている。
自分になにも被害が起きそうにないと知れて、安心する彩であった。




