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百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


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744/929

休み時間にて 15

「なに話してたの?」

「あっ、(あや)ちゃんー」


 菜々美(ななみ)は躊躇っていたが彩は躊躇わない。


 聞かれた明里(あかり)はうふふと笑い答える。


「彩ちゃんのことだよぉ」


 そして明里の視線は、彩の背後にいる菜々美(ななみ)とここね、おまけの涼香(りょうか)に向けられる。


「話すことなんて無いだろ」


 呆れたように言う彩に首を振る。


「あるよぉ、彩ちゃんを振り向かせるにはどうしたらいいのかなぁって」

「はっ⁉ いや待て、は⁉」

「大丈夫だよぉ、ここねちゃんは秘密にしてくれるって言ってたし」

「いやいやいや、そんなの分かんないだろ‼ マジかよ……最悪……」


 明里がどこまで話したのか。彩が誰を想っているというのはさすがに黙っているだろう。


 でも、明里が想いを向けている人物が自分だと知られると、これからはなにを言われたり、されたりするのか分からない。


「彩ちゃん、大丈夫。ほらぁ見て」


 軽く項垂れる彩の肩を叩き、後ろを向かせる。


 そこでは菜々美とここね、おまけの涼香がなにやら話し込んでいた。見るからに明里との会話内容を聞き出そうとしているのだろう。


「えぇ……? なんか聞こえないけど解る気がする……嫌だなぁ」


 そう呟きながらも彩はあの三人の観測を始める。


『なにを話したのよ。答えた方がいいわよ?』

『やめなさい涼香。ここねが答えたくないと言っているのよ!』

『菜々美ちゃん。わたし答えたくないなんて言ってないよ?』

『ここね⁉』

『ここねもそう言っているではないの!』

『えっ、でも……』

『別に世間話だから隠す必要ないよ。明里ちゃんと話していたのはね、文化祭のことなんだぁ』

『あら、そのこと。でもそれなら、菜々美を仲間外れにする必要はないではないの』

『やめてよ涼香、なんでそんなに無駄に鋭いの? 学力残量残りすぎよ』

『うーん……これは秘密なんだけどね――ってことなの。言っちゃった、せっかく菜々美ちゃんを驚かせようと思ったのに……』

『ここね……ごめんさい。せっかくここねがサプライズしてくれようとしていたのに、無理に問いただしてしまって……』

『ううん。わたしも菜々美ちゃんに隠すのは辛かったから。それに、もうちょっと時間と場所を考えた方がよかったなあって』

『悪いことをしたわね。ごめんなさい』

『そうよ! 原因は涼香よ‼』

『ううん、いいんだよ』


 ここねが微笑んだところで彩は明里に向き直る。


「秘密の話は解らなかったけど大丈夫っぽい……」

「でしょぉ?」


 会話内容は明里のことではなく文化祭の話になっている。


 自分になにも被害が起きそうにないと知れて、安心する彩であった。

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