休み時間にて 14
「あんたらなにしてんの?」
「あなたは⁉」
「綾瀬!」
「「彩⁉」」
「うざ」
そう言うのなら、わざわざ話しかけなかったらよかったものの、なぜか彩は自分から涼香と菜々美に話しかけにいった。
「あなたも気になるのね」
「いや別に」
「ここねは可愛いから、そう思うのも無理は無いわ。ていうかここねは誰にもあげないわよ‼」
「おいバレるぞ」
教室内に威嚇する菜々美に鬱陶しそうな顔を向けて言う。
そして彩は外で話しているここねと明里の観察を始める。
涼香と菜々美と彩、三人が不自然に教室の外を見ている状態だ。
「誰か聞こえる? 涼音の声なら聞き逃さない自信があるけど」
「柏木」
「嫌よ。だって私が聞いていいのなら、ここねは離れて話していないわ。こうして離れているということは、私には聞かされない話をしてるってことなのよ」
「じゃなんでこうやって覗いてるんだよ……」
「気になるからよ‼」
「あっそ」
ちなみに、彩にも聞こえないし、なにを言っているのか分からない。
別になにを話していてもいいのだが。
「ていうか、なんで彩もこうしてるの?」
「なんとなく」
「あら、可愛いではないの」
「うざ」
涼香と菜々美に肘で突っつかれながら顔を顰める彩。
本当になんとなくだ。明里の気持ちを知ってからなんとなく気になるとかそんなんではない。いや、明里の気持ちを知ってからいつもよりも目で追ってしまうことが増えたような気もしないでもないが、元々明里とは仲が良いから、やっぱりそんなに変わっていない。
「あら、もう終わったわね」
観察をしていると、涼香の言葉通り、ここねと明里の会話は終わったみたいだ。休み時間だから、長時間話し込むような話題では無かったのだろう。
結構あっさりと手を振って別れている。
そうして別れたここねが戻って来て、その先に恐らく視線を向けた明里がこちらにも手を振ってきた。
彩はそれに、手を振り返しながらさり気なく涼香達から離れ、ここねと入れ替わるように明里の下へ向かうのだった。