お菓子パーティーにて 13
そう言われ、実祈お手製のチャーシューを食べた四人。
チャーシューは冗談抜きで美味しかった。それはもうチャーシュー店としてやっていけるレベル。
そう褒められた実祈は照れくさそうにしながら夢を語る。将来はチャーシュー店を作るんだと。
それを四人は心から応援して、教室から出ていこうとする。
「……なんか忘れてません?」
涼香がドアに手をかけた時、涼音が待ったをかける。
「涼音は今日の夕食を食べられない程食べてしまった?」
「いや、違います。なんでこうなったんだっけ……」
「チャーシュー美味しくて忘れたね」
「まあ戻りながら考えようじゃあないか」
若菜も千春もなにかが引っかかっている様子だが、それがなんなのか思い出せない。
チャーシューの美味さが全てを吹き飛ばしてしまったからだ。
「そうね、戻りましょうか」
とりあえず、涼香がドアを開ける。
「ありがとうごさいやした――って行かないの?」
ドアの動きと連動しているのだろうかというタイミングで実祈の声を背中で受けたが、四人は出ていかず、なんなら開いたドアを千春が即座に閉じた。
「痛いではないの……」
そんな閉じられたドアに激突した涼香が不満気な顔で千春を睨む。
「「「思い出した!」」」
同時に手を打った三人は、涼香を連れてカウンター席へと戻ってくる。
「え、どうしたの……?」
目を見開いた実祈を正面に捉え、三人は順番に言い出す。
「外に」
「一、二年生が」
「いっぱいです」
その言葉に、実祈は心当たりがあるらしく、目を泳がせながら言う。
「……あー、アレよ、アレ。なんか悲鳴聞こえたから」
「だよね、思いだした。アレって結局なんだったの?」
「私が来た時は人が集まってただけだったしなあ……」
「実祈、チャーシューを食べたいわ」
「かしこまりやしたぁ‼」
澱みない手つきでチャーシューを皿に盛り、涼香に出す。
「涼音、あーん」
「美味しいですけど流石にそんなに食べれないですよ」
「残念。なら私が食べるわ」
そんなやり取りを始めた涼香と涼音を放って、悲鳴の原因はなんだったのか考えようとしたが、チャーシューがあまりにも美味しそうで、考えるをやめにした二人。
「チャーシュー二人分ください」
「あいよ‼」
とりあえず、人が少なくなるまでチャーシュー部で時間を潰そうと決めた四人であった。




