お菓子パーティーにて 11
「へいらっしゃい!」
景色が変わったと思えば、聞こえてきたのはそんな元気な声。
「あら、実祈ではないの」
その声の主は、食品加工場で働いている人のような恰好をしている。
頭巾帽子にマスク、ゴーグルに白衣。顔は見えない。
そんな彼女の名前は赤木実祈。チャーシュー研究部唯一の部員だ。
「あれ、戻ってますよね……?」
「ほんとだ」
涼音が気づいた通り、放課後の喧騒は復活しており、怖くもない。一体なにがどうなったのか、元の世界に戻ってこられたらしい。
「四名様でーす!」
そんな訳の分からないうちに席へと案内される。ここは教室のはずなのに、なぜかカウンター席が用意されている。
とりあえず座った四人。すぐにお冷の入ったコップとメニューが出される。
「ねえ涼音、どれにする?」
手書きのメニューには、味噌、醤油、豚骨、塩、シーフード、カレーなど、幅広い味が書かれてある。
「え、あたしお腹いっぱいなんですけど……」
「大丈夫、無理だったら私と千春が食べるから」
それならと、涼音は若菜の心強い言葉を信じて選ぶ。
「じゃあ塩で」
「なら私はシーフードよ!」
「じゃあ私カレー」
「味噌でいくぜ!」
四人の注文に頷いた実祈は叫ぶ。
「湯沸かし入りまあすっ‼」
ビリビリ空気が震えるような声量で叫び、ヤカンに水を貯めてガスコンロで火にかける。
そして涼香達から死角になるカウンター下から、ある物を取り出す。
それはカップ麺だった。
メニューを見て、種類が多くて本当に作れるのだろうかと思ったけど特に何も言わずにスルーしていたが、確かにカップ麺でならその豊富な種類を用意することができる。
「うちはチャーシューにこだわっていてねえ」
そして聞かれていないのに語りだす実祈である。
要するに、チャーシュー研究部だからチャーシューは手作りでかなりこだわっている、というなんの情報も無いことを語られた。
その話が終わる頃にはお湯はある程度グツグツしており、そこで実祈はカップ麺の封を開ける。澱みない手つきで開けられ、粉末スープを入れる。
あまりにもスムーズで見とれてしまう一行。
そこに沸いたお湯を入れ、蓋があかないように重しを乗せて三分。
「「「「三分間待ってやる」」」」
「全員で被るのやめてください」




