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百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


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お菓子パーティーにて 9

「うぅ……晩飯食べれなくなる……」

「やっと落ち着いたわね」


 ほぼ全てのお菓子を涼音(すずね)に詰め込んだ涼香(りょうか)若菜(わかな)は、残ったお菓子を食べて綺麗に片付ける。


 満腹になったからなのか、落ち着きを取り戻した涼音は、だけど涼香の隣にぴったりとくっつきながら二人に問いかける。


「またですか? 異界ですか? またですか?」

「そうよ、またよ」

「なんでえ……」

「そういう時期なのよ」

「これから涼しくなるからだね」


 異界に迷い込むのに時期なんてあるのか。そんなこと知りたくなかったと涼音は、下唇を噛んで涼香を睨む。


「照れるわね」

「ああもう!」

「でも安心しなさい。まだ決まった訳ではないわよ」

「いやもう確定ですよ!」

「いや涼音ちゃん、千春(ちはる)が戻ってこないと分かんないよ」


 今にも泣きそうな顔で若菜を睨む涼音。その可愛さに思わずキュンとしてしまった若菜である。


「戻ったぜ」


 そうやって噂をすれば戻ってくるものである。


 千春は校舎内を駆け回って疲れたのであろう、膝に手を突いて呼吸を整えている。


「よかったわ。戻ってこないかと思っていたのよ」

「おいおいおい、私を誰だと思っているんだ?」


 息を整えた千春は席に着いて不敵に微笑む。


「まさか……入れ替わっている……⁉」


 それっぽい雰囲気で若菜が言うと、驚いた涼音は更に涼香にくっつく。


 その可能性は無きにしも非ず。異界という場所の性質を考えれば十分考えられることだ。


 だがその心配は無いだろう。


 千春から漂う暇人の空気が、これは本物の千春だということに確証を持たせてくれる。


「それでどうだったの?」


 涼香の問いかけに肩をすくめながら千春は答えた。


「少なくとも陰陽部じゃなさそう」

「あら、それは困ったわね」

「なにか違うんですか……?」


 異界は異界でも、どの部活が原因かでなにかが変わるのだろうか。聞くべきではなかったのに聞いてしまった。


 涼音は自らの過ちに気づいて、涼香に頭突きをお見舞いするのだった。

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