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百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


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お菓子パーティーにて 8

 しばらく待っても千春(ちはる)が戻ってこない。足音すら聞こえない、それどころか放課後の学校はなにかと騒がしいはずなのに、なにも音が聞こえてこない。


「……迷い込んでしまったみたいね」


 涼香(りょうか)はそう厳かに告げる。


「教室に待機してても⁉」

「あーあーあーあーあーあー!」


 若菜(わかな)の頬に汗が流れ、涼音(すずね)は耳を塞いで叫んでいる。


「問題はこれが陰陽部の仕業かどうか。こればかりは千春が戻るのを待つしかないわね」

「陰陽部以外でもこんなことなるんだ……」


 陰陽部のせいで異界に迷い込んだことなら若菜もある。というか三年生で迷い込んだことが無い生徒の方が少数派だ。


 若菜は教室の窓から外を見てみる。


「音の無い学校って怖いね」

「あまり気持ちのいいものではないわね。ほら涼音、お姉ちゃんがついているわよ」

「あーあーあーあーあーあーあーあーあー‼」


 固く目を閉じる涼音の頭に優しく触れる。


 異界に迷い込んだことはなんとかなる。今一番大切なことは、涼音を安心させることだ。


「涼音ちゃん、大丈夫だよ」


 安心させようと、若菜もやってきてお菓子を涼音に差し出す。


 それをぼりぼり食べながらも涼音は耳を塞いでいる。


「満腹になれば安心すると聞いたわ」

「じゃあ全部食べさせよう!」

「あーあー――っちょ」


 叫ぶ間も無く、口にお菓子を詰め込まれる涼音であった。

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