自動販売機前にて 番外編
ある日のこと。菜々美とここねは食堂のにある自動販売機まで来ていた。
「ここね、なにがいい?」
「ううん。自分で買うよ?」
小銭を入れて待つ菜々美にここねは首を振って自分の財布を取り出す。
そしてその手を止める菜々美である。
「おごらせて! 今日は私のおごりなのよ!」
「菜々美ちゃん……」
菜々美がそこまで言うのならと、ここねはありがたく菜々美にジュースをおごってもらうことにした。
そうしてここねが買ったジュースを見て菜々美は動きを止めた。
それ取り出したここねは満面お笑みで缶を開ける。そして一口飲んで、菜々美に聞いた。
「菜々美ちゃんも一口飲んでみる?」
ここねからの間接キスのお誘い。もうそろそろ慣れてきたが、それは二人っきりの時だけである。学校の、それも食堂の、それも自動販売機前でやることでは無い。
「あぁっああ……」
「嫌かな? 菜々美ちゃんにも飲んでほしかったんだけどなあ……」
しょぼんとしたここねの姿に、自分のジュースを買うのを忘れてしまった菜々美。これはもう恥ずかしさなど考えずにここねを笑顔にしなければならない。
今の頭の中はそのことだけで、ここねが買ったジュースの味のことなどすっかり忘れてしまっている。
「ののの飲むわ!」
顔を真っ赤にした菜々美が、ここねのジュースを受け取って勢いのまま一口だけ飲んだ。
「がらいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ‼」
涙と汗、そして真っ赤になった顔でとんでもなく残念な顔をする菜々美。そして、そんな菜々美を満面の笑みで見ているここねであった。




