お出かけにて 11
「先輩、起きてください」
しばらく電車に揺られ、数回目に止まった駅で涼音は涼香を起こした。
「もう着いたの……?」
「乗り換えです。だから頑張ってください」
二人の家がある最寄り駅には急行は止まらない。だからこうして乗り換える必要がある。
涼音はのそりのそりと動く涼香を押してなんとか電車を降りる。
「暑いわ……」
二人が出ると、電車は冷気を逃がすまいと扉を閉じ、この場から逃げるように走り出す。
「暑いなら早く歩いてくださいよ」
停車してる各駅停車に向かって涼香を押しながら、額に汗を滲ませた涼音がお願いする。
それでも涼香の目が覚めることは無く、涼音の頑張りによって乗り換えることができた。
「起きてくださーい」
幸いにも各駅停車には人はおらず、涼音は涼香を起こすために行動しやすい。涼香を揺らし軽く叩き、簡単にできる起こし方を実践する。
「起きるわょ、起きるわ……よ……」
ただの居眠りのためか、普段朝起こす時よりも楽な気がする。それでもなかなか起きないのは困りものだ。
「起きてないじゃないですか」
電車が動き出し、あと数駅で最寄りまで到着してしまう。あまり時間がかけられないことに気づいた。
「ああもう、起きてくださいよ!」
「頑張っているのよ……?」
「でしょうね」
涼香は自らも動いて目を覚まそうとしている。その努力には文句を言えない。
ならばこのまま放っておき、涼香に自力で目覚めさせる練習をさせようと黙る涼音であった。




