お出かけにて 10
いつの間にか眠ってしまっていたようで、目を覚ました涼音はゆっくりと頭を動かす。
「おはよう。よく眠れた?」
「おはようございます……」
せっかくのお出かけなのに眠ってしまっていた。その悔しさに涼音は唇を噛む。噛むのだが、ふと思った。
「………………今ってどこですか?」
「次が終点みたいよ」
「やっぱりぃぃ!」
頭を抱える涼音である。
「涼音が気持ち良さそうに寝ているから起こせなかったのよ」
「まあどこで降りるか決めてなかったですもんね」
それに、寝てしまったのは涼音の落ち度だ。むしろ涼香を一人退屈にしてしまい申し訳ない気持ちになる。
程なくして電車は終点に到着した。端から端までの電車旅だ。
「降りる?」
「いや……帰りましょう。もう家でゆっくりしません?」
「そうね。まだ日は高いけど、私もそれでいいと思うわ」
「すみません、わがままを聞いてもらって」
「ふふっ、いいのよ。こうして涼音といるだけで私は十分楽しいから」
「あたしもですよ」
まだ寝ぼけているのかもしれない。
「だから着いたら起こしてください」
そう早口で言って涼音は、再び涼香にもたれれかり目を閉じる。そんな涼音に穏やかに笑いかける涼香であった。




