お出かけにて 9
「あたしらなにしに来たんですかね?」
お出かけ中というには窮屈な場所で、涼音は涼香の隣にぴったりとくっつきながら言う。
家電量販店に避難したはいいが、特に見たい物も無いし人が多い。
「どこもかしこも人が多いわね」
人が多すぎてゆっくりできないし、行きたいところにも行けない。
「戻ります?」
「そうねえ……電車賃が勿体ない気もするけど、このままなにもできずに時間を潰すよりかはマシよね」
さすがに動けば暑い中、人込みの中を歩くなんてしたくない。それにまだ日は高い。今のうちに人の少ない落ち着ける場所でも行った方が有意義な時間になるだろう。
「じゃあ戻りましょうか」
「そうね」
涼音は息を吐き、覚悟を決めた様子で、涼香の手を引き駅へと向かい始める。
あっちもこっちも人だらけ、それを的確に捌きながら駅との距離を詰めていく。
集中する涼音を涼香は嬉しそうに見ながら手を引かれている。
まるで成長する妹を見るお姉ちゃんの姿だが、実際は困った妹の手を引くお姉ちゃんの方が近い。
そうやって涼音が頑張った先に見えてきた駅。
駅のホームは、まだ昼だからか人はそこまでおらず、停車している急行列車に座ることができた。
ここでようやく一息つくことができる。
涼音はさり気なく涼香にもたれかかるのだった。




