お出かけにて 4
いつもは通り過ぎるだけの名も知らない駅で降りた涼香と涼音は、とりあえず改札から出て駅構内を観察していた。
「それ程広くないわね」
「急行も止まらない駅にしては大きいと思いますけどね」
駅構内にはスーパーや薬局などが入っている。急行の止まらない駅ではこういった店舗が併設していることはまあまあ珍しく、市内に近づけば多い印象だ。知らないけど。
「それにしても、暑そうですね」
土日のためか、昼前のこの時間でもスーパーには人が多い。
自転車でやって来た半袖姿の恐らく地元住民を見ながら、涼音は下唇を突き出す。
「そんな顔しないの。ほら、まだ汗はかいていないではないの」
「そうですけど……」
まだ汗はかいていないけど、まだ建物の中だからだけど、外に出たくない涼音である。
「目的地決めてないのに本当に外に出るつもりですか?」
「当然よ。大丈夫よ、ほら」
そう言って涼香が指さす方を向いた涼音が更に下唇を突き出した。
「……なにが大丈夫なんですか?」
涼香が指をさした方には……なにも無かった。




