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百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


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休み時間にて 10

 今日も今日とて涼香(りょうか)さんは美しい。それはもう世界レベル。しかもトップレベル。


 クレオパトラなんて相手にならない(個人の感想)


 それはわたしがずっと抱き続けている感情だ。涼香さんの本性が入学から三日後に知れ渡っても、それでもその美しさは変わらない。むしろより輝いて見える。


 人間の枠内で考えられない。本当に絶景。


 例えば、涼香さんがわたしの作ったクッキー(焦げたやつ)を食べると、そのクッキーはパリの高級なクッキーに見える。


 涼香さんはそこにいるだけで、身の回りのものの価値が上がる。


 涼香さんが座った椅子とかをオークションに出したら億は超えるね!


 そしてわたしはそんな涼香さんと同じクラスになった!


 涼香さんは後ろの席だから振り向かないといけないけど、もうみんなわたしがこういうのだって知ってるし遠慮はしない。


「また涼香の観察?」


 そんなわたしに、涼香さんと三年同じクラスの若菜(わかな)さんが話しかけてきた。


「当然。涼香さんの美しさは地球の宝ですから」

「うん……まあ、確かに見た目だけでいえばそう」


 若菜さんにも涼香さんの良さを講義したいけど、それよりも今日の涼香さんを目に焼き付けたい。


 涼香さんのほぼ妹というか保護者というか、二年生の涼音さんはしょっちゅう涼香さんに会いに来ている。最近その頻度が高くなってきているけど、そうでない時もまだまだある。


 そんな時、涼香さんは席で本を読んでいる。


「ああ……本を読んでいても美しい……」

「様になるよね

「若菜さんにも分かりますか!」

「うん。ほら観察途中でしょ」


 いけないいけない。涼香さんを語り始めてしまうところだった。


 無言でページをめくる涼香さん。目元を軽くかいた涼香さん。目を閉じて深呼吸をする涼香さん。物憂げに外の景色を見る涼香さん。


 どれもいい……!


「こう改めて観察すると、なんで私ら同じ空気吸えてるんだろ」

「それはですね若菜さん!」

「大丈夫大丈夫。観察続けて」

「おっとそうですね」


 この十分が永遠に続けばいいのに。それならずっと涼香さんを見ていられるのに。休みの日も涼香さんといられる涼音さんが羨ましい!


「あ、そろそろチャイム鳴るから戻るね」


 なんですと⁉ もうこの時間が終わりを⁉ そうですかそうですよね、くそう! もっと見ていたい! せめて席替えでもしてくれれば!


 涼香さんの後ろに行きたい!


 もう間もなくチャイムがなってしまう。しばらくの間見られない涼香さんを網膜に焼き付ける。黒板を見ていても涼香さんの姿方がはっきり見えるぐらいに!


 最後の最後、時計を見た涼香さんが本リュックに戻して叫ぶ。


「涼音に会いたいわ!」

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