涼香の部屋にて 2
「これを見なさい」
突如そう言った涼香が、机の中から一枚の紙を取り出す。
『総額百万円プレゼント』
そう書かれている紙を涼音の目の前に掲げながら、自信たっぷりに言う。
「応募しようではないの!」
「勝手にすればいいんじゃないんですか?」
「冷たいわね。見なさい、この豪華商品を」
涼香に言われるでもなく、涼音はその豪華商品を見ていた。見た上での反応だ。
貰えるのは総額百万円分のプレゼントであり、現金ではない。商品は旅行券からギフトカード、高級食品や掃除機、雑貨などそこそこの種類があった。
そのどれにも、涼音は魅力を感じなかった。
「見ましたよ。海鮮詰め合わせが欲しいんですね」
「よく分かったではないの!」
その中に豪華海鮮詰め合わせの文字がワカメのように揺れていた。
海鮮大好き涼香は、なによりもそれが一番欲しいらしい。
欲しいのなら勝手に応募してくれと涼音は思っている。
「そりゃ分かりますよ。それで、なんであたしに見せるんですか?」
「涼音が可愛いからよ」
「答えになってない……」
「ということで、応募するわね」
「あ、はい」
涼香応募用紙を駄目にしてしまわないよう、注意を払う涼音であった。




