放課後にて 23
「これで残る不思議は一個。『各学年に一人いる超絶美人』だね」
「マジモンの不思議じゃねえか」
美沙の言葉に、顎を拭う仕草で返す千春。いったいなにと戦っていたのだろうか。
遡ればキリが無いが、各学年に一人いる超絶美人生徒。なぜこの学校に来ているのか不思議な程勉強ができ、運動もできる。性格も良く、そしてなにより見た目が良すぎる。誰もが校内一いや、世界でも通用する美しさを持つ。そのような生徒が各学年にいるということで、各学年に一人という枕詞が付くのだ。
ただ、水原涼香だけはその枠から飛び出している。そのような生徒達と比べても見た目の良さは飛び抜けている。大いなる自然に人間は敵わない的な感じで、見た目のものが違う。色々とイレギュラーな存在なのだ
「私らは涼香で、二年生が陽菜、一年生が双子の日花ちゃんと月花ちゃん。それで一つ上が宮木先輩、その上が……」
「宮木先輩しか知らない……」
「まあ、元生徒会長だからね。ダメだ、二つ上は思い出せん」
「その年はいなかったとか?」
「いや、いるよ。ほら、一年の時は私らも涼香しか見てなかったじゃん?」
「あー……入学してから三日間は凄かったよね。それ過ぎてからも色とヤバかったし」
二年前に記憶がトリップしそうになり、慌てて戻ってくる。今は思い出話に花を咲かせる時ではない。
このように各学年の超絶美人枠を確認する。これがいったいいつから続いているのか、それを確認するのがいいだろう。
この学校開校当初からいたのか、それともなにかがきっかけにそう続くようになったのか。
「資料あったっけなあ……」
「本格的な調査になってきたね」
「へっ、まあな」
千春はそういった資料がどこにあるのか記憶の中を探す。新聞部、写真部、生徒会室、校長室のどこかだ。
元生徒会長としてのプライドが、一発回答を千春にさせようとしている。
悩みに悩んで、美沙がスマホを触り始めても悩んで、ようやく出した答えは――。
「涼音、あーんしてあげるわ」
「いいですよ」
「遠慮しなくてもいいのよ。ほら、あーん」
「マジでやめてください! ああもう! 離してくださーい!」
強引にマフィンを食べさせようとする涼香から、必死に逃げる涼音であった。




