家庭科室にて 13
千春と美沙が保健室へと向かい、涼香と涼音と菜々美とここねと真奈の五人が家庭科室にいる。
「あら、真奈ではないの」
「え、いつからいたんですか……?」
「急に現れるわよね」
「真奈ちゃんどうしたの?」
真奈は肩にかからない程黒髪をアシンメトリーにした片耳ピアスの生徒だ。その特徴は寝不足のようなクマがあり、この世の全てを憎んでいるかのような目をしていることである。そんな目で真奈は四人を一瞥する。
そしてここねに向かって口を開いた。
「凛空のためお菓子を作りたい」
地獄から這い上がってきたかのような声で言う。
「じゃあ今回はマフィン作ろっか」
ここねの提案に真奈は頷く。既に真奈はエプロンを身につけ、手を洗っていた。
「可愛いエプロンね」
パステルカラーのエプロンは真奈のイメージと程遠いが、その正反対さがいい味を出している。
「これは凛空からのプレゼント。凛空がワタシのために買ってくれた物。凛空からワタシへの気持ちがこのエプロン。決して触れるな」
「触れてないし触れないわよ……」
エプロンの話には触れた菜々美である。
「以外ね。真奈が家庭科部に来るなんて」
涼香の疑問に答えのはここねだ。
「凛空ちゃんに料理を振る舞いたいんだって。今日はおやつだけど、いつもはご飯を作ってるんだあ」
「なるほど。いいではないの」
「水原にしてはまともなことを言う」
「先輩、褒められましたよ」
「私は天才なのよ」
声を潜める涼音へ自信満々に返す涼香であった。




