放課後にて 20
二学期の三年生はだいたい受験で忙しいけど、中には夏休み中に進学が決まっていたりとかで、暇な生徒が一定数存在している。
そんな暇な生徒達の集まりが、ある日の放課後にあった。
「この学校の七不思議……考えてみない?」
スっと、紙を机の上に滑らせるような声で一人の生徒が言う。
「七不思議……?」
「小学生じゃあるまいし」
声の主の他、二人の生徒がそう返す。
トイレの花子さんや階段の数が変わるなど、そういった話なら、小学生の時に噂になっていたりする。
そのどれも遭遇したこと無いけれど。
「その気持ちも解るよ」
言い出した生徒は一度言葉を区切り、立ち上がって机を思いっきり叩いた。
「うちの学校、結構謎多いと思うんだよね‼ ……痛い」
じんじんと痛む手を優しく撫でながら、どうだ? という顔を向ける。
「それはそうだけど……」「いや、でもねえ?」
「各学年に一人いるめっちゃ美人とか!」
「あー……」「そういうもんじゃないの?」
「その誰もが! 基本写真には映らない!」
「あー……!」「確かに不思議だ」
「ていうか涼香の存在自体世界の謎でしょ……」
今頃教室でだらだらしている同級生の顔を思い浮かべる三人。
改めて考えると謎の多い人物だ。
「そう言うなら、涼音ちゃんの可愛さもおかしいよね」
「確かに……」「ほら! あるでしょ⁉」
そこから三人は、いくつかの不思議を出し始める。
――各学年に一人いる超絶美人。
――水原涼香の存在。
――檜山涼音の可愛さ。
――柏木菜々美の爆発体質。
――芹澤ここねの撫で回したくなる頭。
――津村真奈の存在。
「あとは……」
とりあえずパッと思いつくだけで六つ上がった。あと一つあれば七不思議になる。
殆どが同級生の気がするけどそこは気にしない。
あと一つの不思議はなにかと、頭を絞っていると、不意に教室のドアが開けられた。
「おいおいおい、楽しそうなことしているじゃあないか」
その来訪者を見て、こう書き足す。
――どこにでも出没する東崎千春。




