夢の中にて 2
「涼音はー今日もー可愛いー」
「止めてくださいよ‼」
これは涼音の見た夢の話。
起きた頃には忘れているけど、それは起きたから忘れているだけ。夢の中の今は、忘れるなんて思わないし、目の前で繰り広げられる奇行を黙って見ていることもできない。涼音はこれが夢か現実かの判断はできないからだ。
拡声器を持って、街頭演説のように駅前で話している涼香を必死に押さえつけている最中だ。
「どうか涼音を! 可愛い涼音をよろしくお願いします! ……違うわね。涼音は可愛いのよ‼ その可愛さを目に焼き付けなさい‼」
「ああああああああ‼ 止めてくださぁぁぁぁぁい‼」
「ふぇあ⁉」
ガバリと、目覚めた涼音はここがどこかを確認する。
見間違えるはずの無い、慣れ親しんだ自分の部屋。
「なんか……変な夢見てたような……?」
夢の内容は全く覚えていないけど、変な汗はかくしこうして慌てて起きたことから、ロクでもない夢見ていたのは確かだ。
思い出せそうで思い出せない。別にロクでもない夢だから思い出さなくてもいいけれど。
それでも、間違い無く、確信を持って言えるのは、涼香が出てきているということだ。
「まあいいや……。えぇ……、微妙な時間……」
とりあえず時間を確認して、起きるか起きないかを決めなくてはならない。それを考えるため、涼音はとりあえずもう一度布団を被るのだった。




