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水原家にて 2
「おかえりなさい」
涼香が家に帰ると、母が玄関で仁王立ちをしていた。
「ただいま。どうしたのかしら? お出迎えなんて珍しい」
なぜ出迎えられているのか。こうして母が出迎えているということは、なにかあるのだと言うことだけは解る。
「あなた、洗濯物を畳みたい気分になったわね」
当然よね? とでも言いたげな口調の母に、涼香はとぼけるように返す。
「あら、どうしてそう思うの?」
「計算よ」
フッと笑う母に涼香もフッと返す。
「それはどうかしら」
母はニヤリと片方の口を上げて言う。
「洗濯物、いっぱい用意しているわよ」
「仕方ないわね。どうしてもと言うのならやってあげないこともないわよ」
意気揚々と靴を脱ぎ始める涼香であった。




