放課後にて 16
「「ここがウォッチポイントα」」
「なかなかいい響きではないの」
涼香と涼音が連れてこられたのは、校舎三階の隅っこの方。
靴を履いたのにまた脱いで、校舎内へと戻ってきたのだ。
もうなにも喋らないと決めた涼音は、楽しそうに話す涼香と春と秋を冷めた目で見ていた。
「「もう少しで対象が来ると思うから、ちょっと我慢してて」」
もう九月の夕方とはいえ、暑さは収まることを知らないのか、まだまだ暑い。
春と秋の言う対象とはなんなのか、気にならないこともない涼音は、なんやかんやで三人の後ろから外の景色を覗き見る。
丁度この位置からは校門へと続く道が見え、ちらほらと帰宅する生徒の姿が見える。
その対象とは十中八九人間だろう。帰ろうとしていた涼香と涼音を引き止めてまで見せたい人物だ。
ちなみにそのような人物に心当たりは無い。実際に見て、ズッコケる相手かもしれないし、驚いてしまう相手かもしれない。
「「もう来るよ〜」」
「狙撃する?」
「いいや、今撃てば位置がバレるぜ」
新たに聞こえた声の方を向くと、そこにいたのはどこにでも現れる暇人だった。
「あら、また会ったわね」
「まあな」
照れたように鼻の下を人差し指でさする千春にも、涼音は冷めた目を向けるのだった。




