家事炊事部にて 5
「畳むのは得意なのよ。多分」
「確かに、先輩は謎に手先が器用で、なんか知らないけどグラムとミリ単位での計測もできて、なんかもうよく分からないけど謎に精密な手先で、なんかもうよく分からないけど洗濯物を畳むだけなら得意なんですね」
「よく分からないですけど、凄いですね」
美波が涼香に洗濯物の畳み方を教えると、それを見た涼香はすぐに飲み込み実践。学力残量に関係無く、こういったことは得意らしい。
「さあ、どんどん持ってきなさい‼」
洗濯物を畳むのにハマった涼香は、更に畳ませろとせがむ。
「もうありませんよ」
せがまれても、もう洗濯物は無いらしい。無い物は出せない。だったらどうするか――。
「洗濯物を集めに行くわよ‼」
「無理ですって」
薄々予感していた涼音は、冷静に涼香を止めて諭す。
「運動部は、もうみんな引退してるんですよ。だから洗濯物の確保はできません。あと、文化部はいるでしょうけど洗濯が必要にはならないです」
「……パンナコッタ」
「なんで飛ばすんですか……」
両手を床について項垂れる涼香だったが、目をキラリと輝かせたかと思うと――。
「畳んだ洗濯物は大切にしてくださいよ。これ、人のですから」
畳んだ洗濯物をもう一度広げようとしたが、涼音に阻止されてしまう。
さすがに畳みたいからといって、人の物で遊ぶ訳にはいかない。
だから涼香はその勢いのまま、洗濯物には飛び込まず、涼音に飛び込むのだった。




