家事炊事部にて 2
「これはお礼」
そう言って、漣が恭しく差し出したのは市販のクッキーだった。
「これはいいやつではないの」
受け取った涼香が、早速クッキーを食べていると風呂があると言われているドアが開いた。
「お風呂掃除終わりましたよ。おや、涼香さんと涼音さんじゃないですか」
「美波ちゃん戻ってきたね」
「あら、美波ちゃんではないの」
「お邪魔してます」
清水美波――美波ちゃんと呼ばれ、親しまれている三年生だ。身長はここねと同じぐらい小柄で、ここねが小動物めいた可愛さなのに対して、美波は小さく緻密な飴細工のように美しいと形容できる生徒だ。
「ありがとうございます。うちの漣さんのコンタクトレンズを見つけていただき」
美波は涼香と涼音の二人に頭を下げる。
漣の保護者のような仕草。そう考えれば、今の状況は家庭訪問ではないのかと涼香は考える。
そんなしょうもないことを考えてる涼香を涼音は肘でついた。
「家庭訪問みたいね」
「言えってことじゃなんですけどね」
「それ私が娘ってことだよね?」
「自覚があっていいことです」
「先生は私よ‼」
「この世の終わりじゃないですか」
「確かに」
「それは考えただけでゾッとします」
「随分な言いようではないの。全く、困った子達ね」
クッキーをぼりぼり、涼音にもおすそ分けする涼香であった。




