放課後にて 11
「それで私を呼んだってこと?」
ガーデニング部へ行くのかと思えば、千春はとある生徒を呼び出した。
そうしてやってきたのがこの生徒――西崎千秋だった。
気の弱そうな見た目をしている千秋だが、滲み出る雰囲気は強者の風格だ。
千春はよく投げ飛ばされている。
髪が外に向かって流され、スカートというのもあり後ろから見ればもみの木に見える。
そんな千秋を呼んで、千春はいったいなにをしようというのか。
「さあ千秋、私を楽しませなさい」
「あなたも投げられたいの?」
「わざわざすみません……」
「涼音ちゃんはいいわよ、どちらかと言うと巻き込まれてる方だし」
「なぜ千秋は涼音ちゃんにはデレるのか、その議論を始めようじゃあないか」
「涼音が可愛いからに決まっているわよ。終わりよ、議論するまでもないわね」
茶番が始まりそうな予感がした涼音と千秋、二人はそっと教室から出ていこうとするが、涼香と千春に腕を掴まれて逃げることを許されなかった。
「ちーちゃん、私帰っていい? わざわざ合間を縫って来たのに茶番に付き合わされるのは嫌なのよ」
「じゃあお邪魔させてもらおうか。涼香がいるから千秋を呼んだんだぜ」
「さっさと帰れ」
「いいではないの、久しぶりにガーデニング部へ行きたいと思っていたわ」
涼香のお願いにたっぷり数十秒悩んだ千秋は、見るだけならと許可を出してくれた。
「涼音ちゃんとちーちゃん、お願いね?」
「任せたまえ」
「あたしは帰った方がいいとおも――」
「涼音! 行くわよ‼」
結局、三人はガーデニング部へお邪魔することになったのだった。




