台風の日にて 番外編
「今日はずーっと雨だって」
「帰るのが憂鬱ね」
放課後、これ以上雨風が強くなるのなら、部活動も中止で帰宅命令が出るが、そうでない場合は普段通り部活動は実施される。
今日もいつもの如く家庭科室へとやって来た菜々美は、テーブルに突っ伏しながら窓外の光景を見て顔を曇らせる。
「泊まっていく?」
「うぇ⁉」
「わたしの家に、泊まる?」
ここねの言葉の意味を理解した菜々美はすぐに赤くなる。ここねの家にはかなりの回数行っているのだが、なんやかんやで泊まったことはまだ無いのだ。
「いっ、大丈夫……よっ」
「着替えの心配しなくても大丈夫なんだよ?」
「あ、え、そうなの? いえ、でも大丈夫よ。家に帰ることができない程の雨じゃないし」
菜々美の言う通り、部活動もできているし、雨風が少々強いだけで帰れない程ではない。これがもっと強くなり、電車が止まるレベルになれば考えるが。
菜々美の返事を聞いたここねがほっぺたを膨らませる。
「可愛い」
「えへへ」
そんなここねの頭を撫でる菜々美であった。
「じゃあ雨乞いするね‼」
「なんで?」
そう言って、窓際にやって来たここねが雨乞いを始める。
するとたちまち、バケツをひっくり返したような雨が降り出した。
「なんで……?」
「これで家に帰れないね!」
満面の笑みでそう言うここね。
「なんで⁉」
こうして、今日はここねの家に泊まることになった菜々美である。




