台風の日にて 7
「さて、帰ろうではないの」
結局、最後の一枚を使うことは無く放課後を迎えた。
強い雨はまだ降っているため、帰る頃にはまた濡れるだろうが、家に帰れば着替えることができるし大した問題ではない。
「雨強いですねー」
涼音は、嫌だなあ、と思いながら、別に涼香を引き止める理由は無いし素直に帰ることにした。
そして雨が傘を叩く中、涼音はある一つの可能性に気づいた。
このまま家に帰るため、ずぶ濡れになっても大丈夫だと思っていたが、まずは電車に乗らなくてはならない。その電車に乗る時、ずぶ濡れだと周囲に迷惑がかかってしまう。もしや最後の一枚は、電車に乗れなくなった涼香を拭くためにあるのではないか――と。
しかし、そう考えた時にはもう遅かった。
「……いつの間に濡れたんですか……?」
朝来た時よりもずぶ濡れ状態の涼香がそこにいた。傘をさしているはずなのに、朝みたいに突風が吹いた訳でもないのに、なぜ濡れているのだろうか。
「なんでですか」
「濡れてしまったわ」
「なんでですか⁉」
自分が見ていないところで一体どんなドジをしたのわからないが、とりあえず涼香が無事であったことと、最後のタオルの使い道ができて安心した涼音であった。




