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台風の日にて 3
「うわすっごい。濡れすぎじゃない?」
昇降口では、目立たない程度に数人の三年生が待機していた。
予想通りの濡れ具合なのだが、濡れすぎだと言いたいのだ。
「すごい風、横殴りの雨、傘させない。よ」
とりあえず涼香を隠しながら、涼音から超吸水タオルを受け取り涼香を拭いていく。水を吸った制服も、そのタオルを使えばかなりの水分を吸い取ることができる。
「すっごい吸うねこのタオル」
「ほら涼音、私も拭いてあげるわ」
「いいですからさっさと拭かれてください」
拭かれている涼香が涼音を拭こうとし、涼音が嫌がる。そのやり取りの最中、涼音はどうやれば全員濡れるのかを考える。
涼香の母が、涼香に関わりのある人間は全員濡れると言っていたが、そもそもどの程度濡れるのかが分からない。
今涼香を拭いてくれている三年生ぐらいの、少し濡れる程度か、自分みたいにずぶ濡れなのか。
そんなことを考えていると、ある程度の水分を取り終えたらしく、全員で三階――涼香の所属するクラスへと向かう。




