台風の日にて 2
家から駅までは大丈夫だった。
そう、大丈夫だったのだ。底の高い靴と防水スプレーのおかげで靴は無事で、既に靴下はやられているが大丈夫だったのだ。
問題が起きたのは、やはり駅から学校までの間。
強い風が吹いて傘を持っていかれたところ、横殴りの雨が二人を――というか歩く人々を襲った。
「傘、ささない方がいいかしら?」
強風が続くのなら、このまま傘をさしているのは危ない。だが、強い風が吹いたのはこの一瞬らしく、また吹く心配は無さそうだった。
「とりあえず急ぎましょう。もう濡れてるんで」
今まではできるだけ濡れないように歩いていたが、もうかなり濡れてしまったため、あまり気にせず足を早める。
そう言って、早足で歩き始めたが、次第に涼音の歩く速度は遅くなる。
「どうしたのよ?」
「いや、急いで転けたら嫌なんで歩きましょう」
涼香のドジの予防。急がば回れということだ。
ブラウスが肌に張り付いて気持ち悪いが、転んで汚れた涼香を介抱するよりマシだということで、雨に打たれながらも涼音は、涼香をゆっくりと歩かせるのだった。




