台風の日にて
台風が上陸した日の朝、はす向かいにある涼香の家に行くだけでも足が少しだけ濡れてしまう。
車で行きたいな、と思いながらも涼音は水原家の中に入る。
「先輩、雨すっごいですよ」
とりあえず玄関で涼香に来たことを知らせる。するとひょっこり顔を出したのは、涼香とそっくりだが涼香とは違う。すぐ分かる特徴を挙げるならば涼香には左目尻にほくろがあり、母にはそれが無い。
「来たわね」
「先輩の代わりに学校行く?」
「嫌よ」
「そう言うと思った。先輩は?」
「靴下履いているわ。はい、これ」
涼香の母は涼音に、小学生の頃よく使っていた体操服を入れる袋を渡してきた。
受け取った涼音は中身を確認して盛大にため息をつく。
「あたし濡れるの?」
「あの子に関わりのある子は全員濡れるわ」
「休ませてよ」
「駄目よ。健康なら学校へ行かせるわ」
「行くわよ!」
ようやく準備を終えた涼香がやって来る。
母に忘れ物を確認してもらい、忘れ物は無いということで出発する。
「行ってくるわ」「行ってきまーす」
「行ってらっしゃい……気を付けて」
思いっきり顔をしかめる涼音であった。




