お風呂にて
ある日のこと。
一人で風呂に入っていた涼音は、やけに広く感じる湯船で身体を伸ばしていた。
夏休みや土日など、休みの日はいつも涼香と入っていたのだ。そのせいで思う存分身体を伸ばすことができなかった。
でも涼香がいなければいないで、どこか落ち着かない。身体を涼香に預けてだらけられたが、いなければ沈んでしまう。
やはり物足りない。お湯がちゃぷる音だけしか聞こえないのはつまらなかった。
だから涼音は、ある程度浸かると風呂から上がることにするのだった。
一方その頃――。
「物足りないわ。涼音がいないお風呂なんて」
一人湯船に浸かっていた涼香は物足りなさを感じて、自分が抱きしめている涼音をイメージする。
いつもは、涼香の前に涼音が湯船に浸かるのだ。その涼音がいないことで寂しく物足りない涼香。
今は目を閉じ、自分に身体を預けてくれる涼音をイメージしている。
「こら、涼音。ふふっ、脇腹はやめなさい」
イメージは上々、上手くいけば涼音を増やすことができるかもしれない。
そう思ったが――。
「………………いないわね」
目を開けると、イメージの涼音も消えてしまう。
口をとがらせた涼香は、転ばないよう気をつけてお風呂から出るのだった。




