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休み時間にて 5
ある日のこと。
「あっ、涼音ちゃん」
いつも通り、涼香に会いに行こうと、三階にやって来た涼音に気づいたここねが手招きをする。
なぜかここねは教室には入らず、窓から中を窺うように見ていた。
菜々美の観察中なのだろうか。
「なんですか?」
呼ばれたのなら行くしかない。とりあえず涼音は、いつも入るはずの涼香のクラスを通り過ぎ、隣のクラスを覗いてるここねの下へと向かう。
やって来ると、ここねは静かにとジェスチャーをして、教室を覗くように促す。
涼音が息を殺して中を覗くと、そこには、プリントに向かっている菜々美の姿があった。
だろうな、と思った涼音は、菜々美がどうしたのかここねに問いかける。
「えへへ、綺麗で可愛い」
「…………先輩みたいなこと言わないでくださいよ」
「呼ばれた気がするわ」
「うわ来た」
涼音の背後を取った涼香にここねが言う。
「ほら、涼香ちゃんも見て」
「見たわよ。でも私にとっては涼音が一番よ」
涼音の頭を撫でる涼香と、されるがままの涼音であった。




