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百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


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641/930

休み時間にて 5

 ある日のこと。


「あっ、涼音(すずね)ちゃん」


 いつも通り、涼香(りょうか)に会いに行こうと、三階にやって来た涼音に気づいたここねが手招きをする。


 なぜかここねは教室には入らず、窓から中を窺うように見ていた。


 菜々美(ななみ)の観察中なのだろうか。


「なんですか?」


 呼ばれたのなら行くしかない。とりあえず涼音は、いつも入るはずの涼香のクラスを通り過ぎ、隣のクラスを覗いてるここねの下へと向かう。


 やって来ると、ここねは静かにとジェスチャーをして、教室を覗くように促す。


 涼音が息を殺して中を覗くと、そこには、プリントに向かっている菜々美の姿があった。


 だろうな、と思った涼音は、菜々美がどうしたのかここねに問いかける。


「えへへ、綺麗で可愛い」

「…………先輩みたいなこと言わないでくださいよ」

「呼ばれた気がするわ」

「うわ来た」


 涼音の背後を取った涼香にここねが言う。


「ほら、涼香ちゃんも見て」

「見たわよ。でも私にとっては涼音が一番よ」


 涼音の頭を撫でる涼香と、されるがままの涼音であった。

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