放課後にて 9
「いたわ」
「いたね」
「…………」
教室内には数人の生徒がいる。その中に、今回探しいてる生徒がいた。
加賀野奏――髪にかかるぐらいの髪の毛を丁寧にセットしている、美容師の専門学校に既に合格している生徒だ。
三人は冷房を使用しているため閉められている教室のドアを少しだけ開き、その隙間から中の様子を窺っていた。
しかし三人は隠れているつもりだが、教室の中にいる生徒は全員気づいている。それもそうだ、冷房が効いている部屋のドアが開かれているのだ。
それでも誰も気にしないのは、そこに涼香がいるのと、最近の奏の様子がおかしかったからだ。
「さて、入ろうではないの」
「「奏‼」」
「ああもう!」
クラスメイトに促され、奏は涼香が入ってくる前に立ち上がる。
「来たわよ‼」
そのタイミングで、涼香が勢いよくドアを開ける。一歩遅かった。
「こんにちはー」
にっこりと笑うここねがいるのがまだ救いだ。
奏はそんな二人よりも、視線を合わせてくれない音を見る。
「来なさい」
やって来た涼香が奏の手を掴む。そしてここねも反対の手を掴む。
「いこっか?」
これは逃げることができない。元より逃げるつもりは無い。
「音ちゃん……」
二人に連れられた奏は、音の横を通る時にそう言う。
まるで刑事ドラマのようだ。ちなみに逮捕されたのは奏である。
「話は家庭科室で聞くよ」
「早く乗りなさい」
なにに乗ればいいのだろうか。そのツッコミを入れる生徒は今いない。
大人しく連行される奏であった。




