陰陽部にて 3
真っ青になったここね(姿は菜々美)を確認した直後、菜々美(姿はここね)は激しい眩暈に襲われた。
まともに立つことすらできない。その場に膝をつき、気持ち悪さに呻き声を上げる。
「私の計算が正しければこれで戻るはずよ」
「なに言ってるんですか‼」
あまりの様子におかしいと思った涼音が、耳を塞ぐのを止めて菜々美の下へ行く。
「柏木先輩大丈夫ですか⁉」
こうなったのは菜々美だけではない。向こうでは、ここね(姿は菜々美)の荒い呼吸が聞こえてくる。
「涼音、安心しなさい」
「いや無理ですよ⁉」
そんな中、やたらと落ち着いている涼香。
「大丈夫だって、二人を元に戻すだけだから」
「……はい?」
含みを持たせるだけの涼香とは違い、千春は説明をしてくれる。
どういうことか説明を求める涼音に千春が言う。
「ほら、さっきここねが言ってたじゃん? ここねが菜々美にそれ以上は言うなって」
そう言われ、涼音は記憶を引っ張り出そうとするが――。
「……聞こえてませんでした」
ズッコケる涼香と千春である。
そういえばそうだったと、立ち上がった涼香が答える。
「ここねが言ったのよ。異界で怪異の話をすればそれが出てきてしまうと」
「はあ……」
そう言われてもいまいち分かっていない涼音。
怪異という言葉のせいで、頭が理解するのを拒否しているようにも感じる。
そしていつの間にか菜々美とここねの呻き声は聞こえなくなっており、今は二人とも眠っているようだった。
「詳しいことは二人が起きてからにしましょうか」
ホッとしたように息を吐いた涼香。
千春が、菜々美とここねを無理の無い体勢に動かしてくれている。
「さて、戻してもらおうではないの。元の世界に」




