陰陽部にて
ここね(姿は菜々美)の前で、三人の生徒が正座させられていた。
まい、まき、まり、陰陽部の部員三名である。
顔面蒼白冷や汗たらたらのまいと、背中をさすっているまき、ばつが悪そうな表情のまり。
そんな三人の前に仁王立ちするここね(姿は菜々美)である。
これから、お説教が始まるらしい。
その様子を見ながら、涼音は涼香達に聞く。
「陰陽部って言うから、それっぽいものだと思ってたんですけど……なにしてるんですか?」
陰陽部と言われ、陰陽師的なことをしているのかと思っていたが、陰陽部三人の服装は体操服で、教室の中が半分畳になっていること以外はこれといった特徴が無い。
「聞かれているわよ、会長。いえ、元 会長」
「聞かれたのなら仕方あるまい」
「めんどくさいノリですね」
涼音の言葉に悲しそうな顔をする涼香と千春。
気を取り直して、千春が解説する。
「陰陽部って言っても、あの三人陰陽師のこととかあまり分かってないから、それっぽいことしてるだけ。例えば……、てるてる坊主を式神の形で作ったり」
「なんですか……それ……?」
「あとは変な儀式ね。それのせいで私達はいま異界にいるのよ」
「うん、らしい」
涼香と千春の解説を聞いたがよく分からない。あまり理解したくない涼音である。
だが、これは言わなければならない。
「陰陽師的なこと全然知らないのに、異界にあたしら来ちゃったんですか?」
「そういうことよ」
「えぇ……」
考えれば考える程、儀式、異界、陰陽師、は繋がらないような気がする。涼音自身も陰陽師のことはよく分からないからなにも言えないが。
なんか嫌だなあ、と思いながら、涼音はお説教中の陰陽部を見る。
「陰陽部なのに陰陽師関係無いよね? オカルト部と合併したらいいんじゃないかな?」
ここねも陰陽部と言う名前に疑問を持っていたようだ。確かに、やっていることはオカルト部と大して変わらない。
「なんか、菜々美の姿で怒ってるのが面白い」
「ねえ菜々美、どういう気分なの?」
今まで黙っていた菜々美(姿はここね)が、涼香の質問を聞いて眉間に皺を寄せる。
「……なんか、変な気分」
「もしかして入れ替わってるって思い込んでるだけで、実は入れ替わってないのかも」
「自分を菜々美だと思い込んでいるここねということね」
「急にホラー入れるのやめてくださいよ」




