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百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


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異界にて 6

 遊ぶのもそこそこに、五人は陰陽部のいる場所へと向かうことにした。


「そういえばさ、さっきのアレってなんなの? ほら私を追ってきた黒い影」


 色々あってそのままになっていたが、千春(ちはる)が合流した経緯が経緯なのだ。詳しく知ってきたい。


「投げ飛ばそうと思っても触れなかったし」

「千春ちゃん触っちゃったの⁉」


 千春の言葉に、ここね(姿は菜々美(ななみ))が声を上げる。


 ハッとして口を押え、周囲に目を向けるが特に心配は無さそうだった。


 一応、一行は廊下の端に一直線に並びながら進む。


「うんまあ、触れなかったけど」

「なんとも無いの? 心の闇に魔物達は容赦なく入り込んでくるんだよ!」

「なんか聞いたことある言葉だけど……でも大丈夫! 心に闇は無いから‼」


 心配するここねにグッと親指を立てる千春である。


「アレは悪霊よ」


 地味に話が逸れてしまい、涼香(りょうか)が強引に元の話に戻す。今涼香は、涼音(すずね)の隣を歩いている。


 その涼音は手で耳を塞いでいた。


 そしてその後ろを歩く菜々美(姿はここね)が聞く。


「アレ以外の悪霊って出るのかしら?」


 悪霊の類に分類していいのか分からないが、学校ということなら、学校の怪異が出そうである。


「菜々美ちゃん」


 菜々美の質問に、先頭を歩いていたここねが足を止める。


 そして振り返り、真剣な表情で言う。


「なにも言わないで。言うとソレが出ちゃうから」


 その言葉に一同は固く口を噤み、身振り手振りで会話をする。


(コラ、変なことを言わない! 涼音がいるのよ‼)

(おいおいおい、学校ってよく出るじゃん、そういうの考えてくれないと)

(ごめんね⁉ でも私が聞かなかったらあなた達が言ってたでしょ⁉)


 わちゃわちゃ珍妙な動きでコミュニケーションを取る三人。


 その様子を見ながらここね(姿は菜々美)は、自分の姿でそれやられるのなんか嫌だなあ、と思っていた。


 それはここね以外もそうだったのか、一緒にわちゃわちゃしていた涼香と千春、耳を塞いでいる涼音も、そっと目を逸らしていた。

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