異界にて 4
「やっぱり、会長――いえ、元 会長だったのね」
「まさか私に敗れた水原涼香がいるとは――って言いたいんだけど、なにがなんだか分からないから今は無しで」
元会長の千春は服を払った後、助けてくれたここねと、それと激突した菜々美の心配をする。
「ここねありがとうね、大丈夫?」
「痛そうだったわ」
涼音を連れた涼香もやってくる。
見たところ怪我は無いようだか、菜々美もここねも顔を顰めている。頭が激突してなかったことが救いだった。
「ごめんなさい……ここね、大丈夫……?」
「わたしの方こそ、菜々美ちゃんも大丈夫……?」
菜々美とここねの口から出た言葉に、怖がっていた涼音も一緒に、三人は顔を見合わせる。
「とりあえず身長差あって良かったね」
千春が頬に汗を流しながら声をかける。
聞き間違いかもしれないが、菜々美が菜々美に、ここねがここねに大丈夫かと聞いているように見えたのだ。
「千春ちゃんがいなかったら菜々美ちゃんに飛び込んでいたんだけどね」
えへへと笑った菜々美の口から聞こえた。
「私としたことが、いつもなら受け止めることができたのに……‼」
ぐぬぬと拳を握りしめたここねの口から聞こえた。
千春と涼香と涼音は顔を見合わせる。
これはアレだ、と。
(入れ替わってるよね?)
(入れ替わっているわ)
(人って入れ替わるんですね)
(現実であるんだ?)
(異界だから、ありではないの?)
(悪霊いますしね……)
(異界⁉ なにそれ?)
(今いる場所よ)
(陰陽部の仕業らしいですよ)
「「入れ替わってるー⁉」」
三人が目だけで会話をしていると、入れ替わっていることに気づいた菜々美とここねの叫び声が聞こえた。




