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百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


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異界にて 3

 涼香(りょうか)とここねは分かっているのだろうが、涼音(すずね)菜々美(ななみ)はどこへ向かうのか分かっていない。


「陰陽部って知ってます……?」

「一応……」

「あたしだけですか」

「だって同じ学年だし」


 同じく状況をまだ呑み込めていない菜々美だが、陰陽部の存在は知っているらしい。


 一人置いてけぼりの涼音は険しい表情を浮かべる。


「可愛いわね」


 前を歩いていたはずなのに、いつの間にか隣にいた涼香がそんな涼音の頬を突っつく。


「もうすぐよ」


 なにがもうすぐなのか、はあ? という表情をした涼音だったが、うっすらと声が聞こえて瞬間固まる。


「盛り上がっているわね」

「ねー」

「なんなのこれ」


 これがなんなのか知っている様子の涼香とここねに、菜々美は固まった涼音を心配そうに見ながら聞く。


 耳を澄ますと、『悪霊退散悪霊退散』とリズミカルに唱える声が聞こえた。


 更に聞くと『いぇい!』なんて声も聞こえる。


「……なんなの、これ?」

「あーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあー」


 そしてそれは、突如聞こえてきた声にかき消されて聞こえなくなった。


 菜々美は涼音を見るが、声の主は涼音ではなかった。


「とりあえず避難しましょう」


 涼香が近くの教室の扉を開け、四人は教室の中に入り扉を閉める。


 声は徐々に近づき、やがて教室の前を過ぎ去っていく。


 涼音は涼香に抱きついてしっかりと目を閉じていたが、ここねを守りながら様子を見ていた菜々美は、教室内から見えたその影が人の形をしていたのをみてホッとした。


「菜々美ちゃん、わたしは大丈夫だよ。でも、ありがとう」


 こういったモノへの耐性は、菜々美よりもここねの方が高い。だから最初はここねが菜々美を守ろうとしたのだが、反射的に動いた菜々美の方が早かったのだ。


「涼音、大丈夫よ」


 震える涼音を落ち着かせる涼香。それと同時に、再び教室の外から声が聞こえてきた。


『ぎゃあああああああ! なにコレ無理無理無理‼』

『あーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあーあー』


「この声は――」

「わたしが助けに行くね!」


 いち早く動き出したここねが教室扉を開けて外に出る。


「ここね‼」


 菜々美が追いかけようと動いた時には、二つの人影はもう教室からでもい確認できる場所までやって来ていた。


 そしてここねが逃げている人物の連れて教室に転がり込んできたのは、菜々美が教室の外へ出ようとするのと同時だった。


「きゃっ」「ぅびゅぇっ」「うわっ」


 教室に転がり込んできたここねをキャッチ――とはいかず、菜々美とここねは激突、そしてここねが助けた人物は教室内に投げ飛ばされて受け身を取っていた。


「とりあえず閉めるわね」


 そんな三人を避け、涼香がサッと扉を閉める。そんな涼香の姿を涼音は涙目で見ていた。

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