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百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常  作者: 坂餅


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家庭科室にて 3

涼音(すずね)は泣いたのよ」

「ちょっと先輩‼」


 再び家庭科室に戻って来た一行。


 全員が席に着くや否や、涼香(りょうか)がここねに言った。


「ごめんね」


 それを聞いたここねは、首をすぼめていた。


「……なんであんな部屋に呼ばれたんですか?」


 涼香に泣いていたことを暴露された涼音は、耳を少し赤くしながら、もう一度ここねに問いかける。


「涼音ちゃんとお話ししたかったからだよ」


 しかし答えは変わらない。


 困り果てた涼音を見て、今度は涼香が口を開く。


「あの教室はいったいなに?」

「マッドサイエンティストが住んでそうな雰囲気だったわよ」


 涼香の質問に、菜々美(ななみ)も参戦する。


「見つけちゃった」


 その質問にえへへと答えたここねである。


 見つけちゃったで済ましていいのか分からない部屋だ。


「遮光カーテンあったんである程度絞れそうですけど……部屋に生物の教科書ありましたし」


 呼ばれた理由を聞いても答えに期待はできない。それなら、せめてあの教室はなんなのかぐらいは知りたい涼音である。


「私も涼香も、あそこがなんの教室か確認できてないわ」

「でも特徴からして理科室のはずよね?」

「じゃあ理科室ですかね?」


 意見を出し合った三人。遮光カーテン、机と椅子の種類、小部屋にある生物の教科書。理科室しか思いつかない。


 三人が答え合わせとしてここねに向かって言う。


 「せーの」

 「「「理科室」」」


 正解は――。


「えへへ」


 ここねは笑うのみ。


 正解か不正解か分からない。


 もしやと、その笑った意味を考えてしまい、涙目になった涼音が涼香の制服の袖を引っ張る。


「どうしたの?」

「まさか……」


 突然涙目になった涼音を当然心配する涼香である。


 そこで涼音はある一つの可能性を話す。自分の中に留めておきたくなかった。早く言って、この怖さをどうにかしたかったのだ。


「存在しない教室……」

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